フェーズ2:ストレスチェック(検査)


 ストレスチェック制度について社内に周知し、衛生委員会等との審議・調整を済ませ、明確なスケジュールを決めたら、いよいよ実行段階です。外部に依頼する場合は見積りや予算措置、発注等を済ませます。
 担当者(事業者側)は、従業員からの問合せがあれば応じ、一人でも多くの従業員が受検するよう努めます。
 実行する段になって準備が不十分な事項を見つけたら面倒でもフェーズ1に戻り、必要であれば衛生委員会等で協議し、改めて計画や規定に盛り込みます。


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ストレスチェック(検査)前に決めておくこと


 ストレスチェック(検査)開始前に、以下のことが済んでいるかどうか確認しておきましょう。

実施者を決める 実施者及び実施事務従事者への正式な依頼を済ませ、または委託先の外部機関への発注を済ませて、スタンバイしてもらいます。
 なお、実施者を外部機関に委託する場合に参考にすべき内容が厚労省マニュアル「-116-」~「-119-」ページ(印刷表記)にかけて掲載されています。このうち『外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例』の部分については下記リンクからダウンロードできます。
委託する場合チェックリスト »
(厚生労働省ホームページ内にリンク)
検査方式と評価基準を決める どのような検査項目(推奨57項目または簡易23項目、その他)で行うか、高ストレス者をどのように判定するか、どのような方法(紙の調査票またはICT)で従業員に回答してもらうかが決まっている状態にします。
 なお、57の検査項目については厚労省マニュアル「-34-」~「-35-」ページ(印刷表記)に記載されているほか、以下のリンクからダウンロードできます。
職業性ストレス簡易調査票 »
(厚生労働省ホームページ内にリンク)

 また、高ストレス者の選定方法については、厚労省マニュアル「-178-」~「-182-」(印刷表記)に記載されているほか、厚労省のサイトからこの部分のみの抜粋がダウンロードできます(ダウンロード版は一部の表記が旧マニュアル(平成27年5月版)に基づく内容になっています)。
高ストレス者の選定方法 »
(厚生労働省ホームページ内にリンク)
対象者を選定する 受検対象となる従業員の選定を済ませます。原則として常時使用する労働者を対象とします。「常時使用する労働者」の定義は厚労省マニュアル「-30-」ページ(印刷表記)に記載されています。



事業者が行うこと


検査前

従業員への通知 いつ、どこで、どのように受検してもらうのか等を、対象となる従業員に通知します。口頭ではなく書面や電子メールを用います。通知文の具体例が厚労省マニュアル(印刷表記「-32-」ページ)に載っていますので参考にしてください。
受検手段の準備

<紙の調査票を用いる場合>
 人数分の回答用紙とともに、記入済みの回答用紙を回収するための封筒なども準備します。回答内容が周囲に漏れないよう配慮します。(厚労省マニュアル 印刷表記「-35-」~「-36-」ページ)

<ICTによる方法の場合>
 使用するソフトウェアやシステムに応じて準備してください(例:パソコンのセットアップ、ソフトウェアのインストール、受検対象者の登録、ログイン用IDやパスワードの設定、等)。回答済みのデータが実施者以外の目に触れないようになっているか注意します。

検査中
問合せへの対応 問合せ窓口を設け、受検者からの問合せを受け付けます。問合せ内容によっては実施者に連絡を取るなど、必要な措置をとります。
受検の勧奨 受検期限が近付いても受検を済ませない従業員に対しては受検を勧める連絡をします。受検の勧奨は事業者でも実施者でも行えます。従業員が受検を済ませたか否かについては実施者から情報を受け取ってよいとされています(回答内容や結果については禁じられています)。なお、受検勧奨の際は、業務命令のようにならないよう注意します。(厚労省マニュアル 印刷表記「-48-」ページ)
検査後
検査結果の受け取り 実施者を通じて、検査結果の提供に同意した従業員の検査結果を受け取ります。

※ この後のフェーズで、面接希望の受け付けや、職場環境改善等に取り組んでいきます




実施者が行うこと


検査前

事業者との取り決め内容や、委託・契約内容に応じて必要な準備を済ませます。
紙の調査票、ICT、いずれの場合も労働者(事業者の従業員)が受検を開始できる状態にあることを確認しておきます。

検査中
受検データの管理 プライバシーの保護、情報漏えい等に注意し、責任をもって受検者の回答を管理します。
受検状況の把握 日々、受検の進捗状況を把握します。定められた受検期限が近づいたら、未受検の労働者をピックアップしていきます。(受検期限の何日前に勧奨を行うか、あらかじめ事業者と決めておくとよいでしょう)
受検の勧奨 受検期限が近付いても受検を済ませない労働者に対して受検を勧める連絡をします。受検の勧奨は事業者もしくは実施者から行います。あらかじめ事業者と役割を決めておきます。従業員が受検を済ませたか否かについては事業者へ情報を伝えてよいとされています(回答内容や結果については禁じられています)。実施者から受検の勧奨を行う場合の例が厚労省マニュアルに記載されていますので参考にしてください(印刷表記「-45-」ページ)
検査結果を労働者へ通知 検査結果は遅滞なく労働者に通知することとされています。その際、検査結果を会社側(事業者)に提供してよいかについても確認をとります。

<受検者に通知すべき内容>

①個人のストレスプロフィール(以下の3つについて特徴や傾向を数値、図表等で示したもの)

  • 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  • 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

②ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果)

③面接指導の対象者か否かの判定結果


<事業者への提供についての同意取得方法>
 検査結果を通知する時、または通知後に別途、個々人ごとに同意の有無を確認することが望ましいとされています。また、証拠を残す必要があるので、書面又は電磁的記録によって行ってください。
検査後
検査結果を事業者へ通知労働者の同意が得られた場合に限り、検査結果を事業者に提供します。
受検データの管理引き続き責任をもって受検データを管理します。データは5年間の保存が義務付けられています。実施者が保管する場合のほか、事業者が保管する場合など、複数のケースがあります。(厚労省マニュアル「-62-」~「-64-」ページ)

※ この後のフェーズで、面接指導が必要な労働者の選定、等に取り組んでいきます。




『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』について


 厚生労働省から、ICTを用いた労働者のストレスチェック(検査)と実施者による管理・分析が行える無料のコンピュータソフトが公開されています。
 このソフトは『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』という名称で、厚生労働省のWebサイトからソフトウェア本体と取扱い説明書がダウンロードできます。

2017年4月5日に、新バージョン(Ver.2.0)が公開されました。
以前のバージョンを使用している場合は、新バージョンに切り替えるようアナウンスされています。
<主な改善点>

  • Windows10で動作するようになった
  • 実施者が手動でバックアップを取りやすくするための機能を追加

プログラムの提供ページへ »
(厚生労働省ホームページへリンク)

 『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』は、「受検者回答用アプリ」と「実施者用管理ツール」との2つから成っており、イントラネットや社内ネットワークに繋がれたパソコンやタブレット等から使用できます(スマートフォンからの使用は現状、困難と思われます)。

受検者回答用アプリ
実施者用管理ツール
労働者がストレスチェック(検査)を受検するためのものです。
実施者が検査結果の管理や出力、高ストレス者の判定、集団分析等を行うためのものです。
受検者回答用アプリ
労働者がストレスチェック(検査)を受検するためのものです。

実施者用管理ツール
実施者が検査結果の管理や出力、高ストレス者の判定、集団分析等を行うためのものです。

受検者回答用アプリ
 最初に自分の氏名や所属等を入力し、画面に従って次に進むと、ストレスに関する質問への回答画面が表示されます。質問数は57問のパターンと23問のパターンがあり、あらかじめ「実施者用管理ツール」で実施者が設定しておきます。回答は全て選択式で、マウスクリック(タブレット等の場合はタップ)で回答できます。全ての質問への回答が完了すると終了画面が表示されます。なお、このアプリでは自分の検査結果を見ることはできません(2015年12月時点)。検査結果は別途、実施者から通知してもらう必要があります。

実施者用管理ツール
 「受検者回答用アプリ」も含めたプログラム全体の基本設定や、質問の設定、受検者の管理等はこのツールから行います。名称の通り、実施者が使うものです(ツールの設置までは事業者が行い、ツールを動かす時点から実施者のみが使うといった方法もとれます)。
 初めて起動すると初期設定が必要なメニュー画面が表示されるので、表示にしたがって必要な項目を設定します。項目の中にはこのツールを使用する際のパスワードの設定も含まれます。設定したパスワードは実施者以外に漏れないよう管理し、実施者以外がこのツールを使用できないようにします。
 このツールは、「受検者・未受検者一覧」 画面や「ストレス分析(個人)」画面、「高ストレス者判定」画面、さらには、検査後の職場分析に必要な分析を行うための画面も備えています。こうした画面から検査の進捗や検査結果を把握できるほか、結果をCSV形式で保存したり、労働基準監督署への報告用紙に記入する情報を表示してくれる機能もあります。

導入に当たって
 これらのプログラムの導入には、まずイントラネットや社内ネットワークの環境が必要です。
 一例として、50人以上の事業場で各人のデスクにパソコンがあり、サーバが1台、プリンタが1台あって、互いにLANで繋がれた状況(クライアントサーバシステム)があるとします。サーバ内には従業員が使用するドキュメントやソフトウェアが格納されており、事業場内の全員が使用するものには全員がアクセスできる権限を与えることができるものとします。また、ある一定の条件を満たす人しか使用できないものについてはその人達だけがアクセスできる権限を与えることができるものとします。この場合、「受検者回答用アプリ」はサーバ内の全員がアクセス権限を持つ領域(フォルダ)を作ってそこに設置し、「実施者用管理ツール」は実施者しかアクセス権限を持たない領域(フォルダ)を作ってそこに設置する、というのが一般的です。

 プログラムのセットアップ自体は、説明書の手順にしたがって各ファイルをサーバ等にコピーしていくだけなので、それほど複雑な作業ではありません。ただ上記のように、サーバ内にアクセス権限を設定できないようですと、『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』の利用はお勧めできません。また、サーバ自体の盗難防止や、データの改ざん対策等、セキュリティ面に注意を払う必要もあります。

 各プログラムを動作させるパソコンやタブレット等に必要な条件は以下のとおりです。
必要OS 以下のいずれかのOS
  • Windows XP
  • Windows Vista
  • Windows 7
  • Windows 8
  • Windows 10(※ ver.2.0のみ)
必要コンポーネント「実施者用管理ツール」のみ以下が必要
.Net Framework 3.5以上 (ドットネットフレームワーク 3.5以上)

※ 「実施者用管理ツール」の初回使用時に必要なソフトウェアがインストールされていない場合、セットアップのための画面が表示されます。表示にしたがってクリックしていくとインストールは終了します。

画面解像度横1024px及び縦768px以上

 なお、『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』に関する詳しい設置方法や使い方等については、同プログラムのダウンロードサイトにある各種マニュアルをご覧いただくか、同サイトに記載されているコールセンターにお問合せください。(当社ではこのプログラムに関するお問合せへの対応はいたしません)


検査方法による違いについて


 これまで述べたとおり、ストレスチェックの検査方法には紙の調査票を用いる方法とICTによる方法があります。
 ICTを用いる方法には、先に紹介した『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』のほか、民間企業等が各種のサービスを提供しています。『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』と違い、検査結果がその場で判るようになっているものが多く、また、『厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム』で不足する点や手間ひまがかかる部分をカバーする仕組みが盛り込まれている傾向にあります。

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