レポート課題における文章診断ソフトウェアの利用
1.はじめに
本稿は、単元「情報通信ネットワークとコミュニケーション」(教科書:日本文教出版「社会と情報」)での、レポート課題に関する授業実践をまとめたものである。本単 元では、「情報通信ネットワークのしくみや特徴を踏まえ、効果的なコミュニケーションの方法を習得させるとともに、情報の発信及び受信時に配慮すべき事項を理解す る」を学習目標とした。
レポート課題において、レポートの内容の質を向上させることは重要であるが、その内容を伝える文章力も併せて必要である。授業でレポート課題を行った場合、授業中 の机間指導で、たとえば、指示された視点を盛り込んでいるか、レポートテーマに対して十分な調査を行っているか、考察が独創的であるかなど、レポート作成の視点に ついて指導することはできる。しかし、一クラスに対して、その場で個別にレポートがわかりやすい文章であるかどうかをチェックすることは難しい。よって、生徒それ ぞれが、「わかりやすい文章とは何か」を意識しながら、レポート作成を行える工夫が必要である。
今回、筆者はパソコンを用いたレポート課題において、文章診断ソフトウェア(今 回は、株式会社THE NETの文章力向上支援ツール「SAI」を利用した。)を利用し、「わかりやすい文章とは何か」を意識しながらレポート課題に取り組めるように、 授業を実践した。その成果と今後の取り組みを報告する。
2.授業の流れ
本単元は、全6時間で授業を行った。各時間の内容は、第1時「WWWのしくみを理解しよう」、第2時「WWWを利用したコミュニケーションの特徴を調べてまとめよ う。その1」、第3時「WWWを利用したコミュニケーションでの利点と利用時の配慮事項を考えよう」、第5時「電子メールが届くしくみをもとに利点と利用上の配慮事項 を考えよう」、第6時「電子メールを利用したコミュニケーションの方法を習得しよ」とした。
本単元では、WWWを利用したコミュニケーションとして、ブログ、ウィキ、電子掲示板、Q&Aサイト、動画共有サイト、SNSの6つのサービスを挙げ授業を進めた。 単元第2時、第3時、第4時において、レポート課題を通して学習目標を達成できるように授業を行った。第4時でWWWを利用したコミュニケーションでの利点と 利用時の配慮事項を考えるために、上記の6つのサービスについて、教科書やWebを利用して調べ、レポートにまとめさせた。6人グループを作り、その中で、6つのサービスの中から1 つ担当し、レポートを作成した。レポート作成に際して、「各サービスの概要や特徴」、「実際に利用させている主要なサービス名」、「コミュニケーションの形態(1対1または1対多か、同期 か非同期か)」、「そのサービスで使用している
図1:レポートのフォーマット
3.ポイントなる授業内容
単元第2時と第3時の前半で、レポートを作成し、第3時の後半で文章診断ソフトウェアを使用して、生徒がそれぞれ、レポートを添削する。生徒は、図2のように文 章診断ソフトウェアの入力フォームに、タイトルと本文をコピーアンドペーストし、診断ボタンを押す。図3のように表示された診断結果とアドバイスをもとに、文章を 添削する。今回は、80点以上を目指して、繰り返し添削を行わせた(「SAI」基準は65点以上)。
図2:診断する文章の入力
図3:文章の診断結果
4.授業実践の成果
- 自分で書いた文章の評価が、その場ですぐに点数として表示されるので、生徒が添削を意欲的に行うことができた。
- 文章診断ソフトウェアの評価には、点数だけでなく、文章をよりよくするためのアドバイスが表示されるため、添削することを通して、生徒が、「わかり やすい文章」を作成する上でのポイントを学ぶことができた。
- 教員がレポートの点検や評価をする際に、文章の書き方の指導の時間が省けレポートの内容の理解に集中することができた。
5.おわりに
今回の授業実践を通して、授業内容とソフトウェア利用の相性を考えることが必要であると考える。今回は、教科書やWebページを参考にした調べ学習の内容を添削 したが、自分の考えや意見など、生徒がオリジナルで考え書いた文書に対する添削のほうが、利用価値が上がると考えられる。今後は、実習や実験の考察をまとめさせる ようなレポートに利用していきたい。
また、文章診断ソフトウェアは、用意された基準によって文章を診断するものであるので、文章の内容の良し悪し、レポートテーマに沿って書かれているかどうかは評 価できない。今後は、生徒が添削とともにレポートの内容の質についても意識しながら作成を行えるような工夫をしていきたい。
参考資料
文章力向上支援サービス「SAI」活用マニュアル(株式会社THE NET)
東京都高等学校情報教育研究会 発行
2014(平成26)年度 研究紀要
P8-9 レポート課題における文章診断ソフトウェアの利用
朝比奈岳彦(東京都立武蔵高等学校)