現状、ストレスチェック結果の集団的分析は「努力義務」とされています。一見「やっても、やらなくてもよいこと」とも受け取れますが、どういうことなのでしょうか?。
集団的分析を含め、ストレスチェック制度が創設される過程については「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する検討会報告書」(平成26年12月17日 厚生労働省労働基準局安全衛生部/「ストレスチェックと面接指導の実施方法等に関する検討会」/「ストレスチェック制度に関わる情報管理及び不利益取扱い等に関する検討会」)に、検討内容や経緯が記されています。(以下、「検討会報告書」と呼称します。
ダウンロードはこちら » )
努力義務について検討会報告書では『この場合の努力義務は、集団的分析の実施の必要性や緊急性が低いことを意味するものではなく、事業者は、職場のストレスの状況その他の職場環境の状況から、改善の必要性が認められる場合には、集団的分析を実施し、その結果を踏まえて必要な対応を行うことが自ずと求められることに留意するべきであること。』(印刷表記「13」ページから引用)としており、「努力義務」とは「やってもやらなくてもよいこと」ではなく「必要であればやるべきこと」を意味するものと思われます。
その一方で、集団的分析自体があまり普及していないことも、検討会報告書では認めています。
『(中略)・・・現時点では集団的分析が広く普及している状況にはなく、手法が十分に確立・周知されている状況とも言い難いことから、まずは集団的分析の実施及びその結果に基づく職場環境の改善の取組を事業者の努力義務とし、その普及を図ることが適当。』(印刷表記「13」ページから引用)
こうした状況から「努力義務」という表現に落ち着いたようです。
実際、「仕事のストレス判定図」による分析結果は職場の改善対策を立てる材料としては不十分と見受けられます。今後、検討委員会(厚生労働省)から、さらに詳しい分析方法や改善対策立案についてのガイド等が出ることが望まれます。企業においては毎年きちんと集団的分析を行い、結果を残しておけば、後々有効活用できるかも知れません。
また、検討会報告書では『国は集団的な分析手法の普及を図るとともに、その普及状況などを把握し、労働安全衛生法の見直しに合わせて、改めて義務化について検討することが適当。』(印刷表記「13」ページから引用)と述べられており、「努力義務」から一歩進んだ「義務化」への含みも残された形になっています。留意しておくとよいでしょう。